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ライター今泉愛子のブログです
60歳からは「小さくする」暮らし 

お手伝いした本が発売になりました!

 

藤野嘉子

『60歳からは「小さくする」暮らし』

講談社

 

 

年を重ねると、昔の自分とは違うことに気づきます。

からだが重くなったり、頭の回転が鈍くなったり、心が沈みがちだったり。

以前とは明らかに違う自分に、戸惑ったり、落ち込んだりしますよね。

 

料理研究家の藤野嘉子先生もそうでした。

ずっと同じ家に住み続け、ものはたまる一方。

だけど収入は、昔と同じようにはいかないだろう。

 

人生の上昇期に、家を引っ越すのは、当たり前のことでした。

そこには、明るい展望がついてきます。

でも人生の下り坂に差しかかったとき、人はそう簡単に暮らしを変えることはできません。

 

藤野先生は、60歳を目前に一大決心します。

暮らしを変えることで、これからの人生を積極的に受け入れることにしたのです!

 

住み慣れた広い家を手放し、2LDKのUR賃貸物件へお引越し。

食器も調理器具も、衣類も本もたくさん手放しました。

 

この本は、断捨離成功談ではありません。

「なんであれ捨てちゃったんだろう?」という失敗もたくさん。

だけど人生に失敗はつきもの。

失敗しないようにと用心深くなるよりも、失敗しても明るく笑っていられる方がハッピーです。

 

藤野先生も、自分自身の心に向き合い、これからもずっと素直でいよう、と心に決めます。

 

だからこの笑顔。

 

何かを変えることは怖い。

住み慣れた家にこれからもずっと住み続けたいし、今さらものを減らすのも億劫。

だけど暮らしを変えることで、明るい気持ちが手に入ります。

ムリやムダを減らすことで、ハッピーな気分になれるんです。

 

これから縮小していくかもしれない人生に、明るく立ち向かいたい人にぜひ読んでいただきたいです!

 

 

 

シニア向けのレシピも紹介しています。

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 10:32 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ごほうびがなくても仕事を続けたい」 ポンタくんの働き方

小学校の道徳の教科書が話題になっています。

隣の町で地震が起きて、ポンタくんが地域の仕事を手伝ったところ、

町長からごほうびをいただきました。

 

だけど、ポンタくんはこう言います。

「ごほうびがなくても仕事を続けたい」

 

そのあとに「だって」とあって、理由を自分たちで考えるというのが課題。

詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

 

Twitterでは、批判的な意見が多いです。

「タダ働きを推奨するのか」と。

たしかにブラック企業と言われる企業は、やる気や忠誠心を盾にタダ働きを要求します。

いわゆる「モラハラ」に近い部分もあると思います。

断りにくい。

 

見返りを求めず、「集団に尽くす」行為を尊いという考え方があります。

これは、宗教によっては「神への奉仕」と考える人たちもいて、

それだと「わたし」と「神」との関係になりますから、メンタル的にはわりとスッキリしています。

 

「神」ではなく「集団」になると、ややこじれる。

同調圧力みたいなものが生まれるからです。

 

ポンタくんも、自分がやりたくて続けるなら、それでいいと思います。

だけど「ごほうびがなくても仕事を続けたい」という言葉が、

本心なのかどうか。

 

つまり「ごほうびはいりません」が、謙譲の美徳的な価値観にもとづいていて、

なんとなく「そうした方がいいんじゃないか」と思い込んでいるとしたら問題です。

 

そっちの方が周りから褒められるんじゃないか、評価が高いんじゃないかと思っていると危険なんです。

褒められたくて、行為がどんどんエスカレートすることもあります。

やがて自分を見失います。

 

「断りにくい」としても同じです。

町長の気持ちを忖度して、「ごほうびなんていりません。僕にこの仕事をやらせてください」

と言っていると、やがて自分を見失う。

 

それが、ブラック労働が起きたり、日大アメフト部のような問題が起きたりする背景にあると思います。

 

無償でもやりたいことって、いっぱいあります。

人の役に立ちたいという気持ちまで、お金に変えることには抵抗がある。

 

道端のゴミを拾う、落し物を交番に届ける、席を譲る。

そういうことは、誰もが見返りを求めず自然とやることですが、

それより規模が大きく、期間が長く、定期的になってくると別です。

それは「仕事」

親切でやることと仕事の線引きは必要だと思います。

 

そして、わたしのようにフリーランスだと、

どこまでが「有償」でどこまでが「無償」かは難しいところがあります。

そこをギチギチに考えるとしんどい。

 

「わたしと編集者」というユニットで仕事をしていると考えた場合、

必ずしもわたしの仕事ではないけれど、今ついでにわたしがやってしまった方が、

ユニット単位で労力は減る、ということに関して、わたしはやるようにしています。

 

考え方は色々あると思います。

編集者がやってくれた方がユニット単位で仕事量は減る、あるいは大した手間でないようなことでも、

「それはライターさんの仕事です」ときっぱり分けて考える方もいます。

人それぞれ。

 

だけど、何かをやったときに、

例えば、わたしが「その方が編集者がほめてくれる」「感謝してくれる」みたいな気持ちがあると、ダメです。

その気持ちが、やがて自分の負担になるんです。

相手の人は、わかってくれているのかな?と思うようになる。

その不満は、どんどん大きくなってゆきます。

 

「尽くす女」って、本当の意味での尽くす女はあまりいません。

だいたいみんな、それを相手にわかってほしくてやっています。

「いい女」と思われたい。

「おまえのおかげ」と言われたい。

評価されたいんです。

 

夫婦になってくるとまた違うかもしれませんが、

恋愛関係の場合は、そういうことが多いです。

 

尽くす女は、鬱憤がたまる。たまりがち。ためがち。

最初は純粋に親切だったのに、

次第に「わたしはこれだけのことをしてあげている!」となってしまうことも多い。

お互いしんどい。

 

要は、自分がやりたいかどうか、です。

ほめられなくても、感謝されなくても、自分はやりたいのか。

 

わたしは、編集者との関係で、仕事のプラスアルファの部分は、

ほめられたいとか感謝されたいとか、そんな気持ちではなくて、

できる範囲のことを、合理的な判断に基づいてやっています。

そこに金勘定は入ってないですし、感情の貸し借りもありません。

 

この前、ラン友さんたちのウルトラマラソンへの応援もやりたくてやりました。

もちろん、仲間たちが喜んでくれたらうれしいけれど、

「感謝されたい」的な気持ちは全然なくて、

ウルトラマラソンに興味があるし、行ってみたい、と思ったのです。

だからとても楽しかった!

 

家庭内の仕事は、これまでずっと家事、育児の9割を担ってきました。

これについては、やりたかったわけではないですよ。

経済的に報われれているとも言い難い。

 

でも自己犠牲ではありません。

状況を総合的に判断して、わたしがやるのが一番手っ取り早かった。

やるべきことを淡々とやってきた感じです。

だから「わたしは家庭のために尽くしてきた」とは思っていないですし、

なんでわたしばっかり!とか、わたしは損している!というのもありません。

 

だから、わたしがポンタくんなら、

「だって、やりたいから」と答えます。

「だって、みんなの役に立ちたいから」とは言いません。

みんなの役に立つことがわかっていたとしても、それ自体を動機にはしない。

判断の基準を、自分の内側にもつことが大切なんじゃないかな。

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 07:25 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
出口治明『別冊100分de名著 読書の学校『西遊記』』発売!

私が構成を担当した本が発売になりました!

 

別冊100分de名著 読書の学校『西遊記』

出口治明

NHK出版

定価800円+税

 

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NHKのテレビ番組「100分de名著」の別冊で、リアルな授業をもとにした内容です。

出口さんが授業を行ったのは、都立桜修館中等教育学校。

生徒さんたちは最初は緊張した様子でしたが、次第に打ち解けてどんどん反応がよくなりました。

 

この本は、『西遊記』を通じて、中国の歴史、古典を読む意義、そして人生への向き合いかたを語ります。

出口さんの得意ジャンルは、歴史。

特定の時代や地域に偏ることのない豊かな知識をもとに、歴史を解説してくださるからとてもわかりやすいんです。

 

中国の歴史を俯瞰的に解説しています。

遊牧民との対立、黄河と長江という二つの大河、気候の影響など、古代からの事象をもとに

中国という国の成り立ちを読み解く。

 

こうした知識は、出口さんが本や旅、そして人から学ぶことで蓄積したもの。

読書量だけでも膨大ですが、出口さんは読書について、

出口さんは出だしを読んでつまらなかったらやめていい。

それは書いた人がアホなんです、とおっしゃいます。

 

自分がアホだからと悩まなくていい。

苦行にように読まなくてもいいってことです。

気がラクになりますね。

 

だけど、古典は、間違いなく面白いから読めと。

面白くないのは、自分に知識がないから。

ということで、この本は、西遊記が生まれた中国の歴史解説から始まります。

 

そして西遊記の魅力はというと、登場する人物たちのハチャメチャさにあります。

孫悟空も猪八戒も沙悟浄も、そして高僧の三蔵までも、

「自分さえ良ければいい」という人たち。みんな自分勝手なんです。

つまり西遊記には、こうしろ、ああしろという教えはあまり含まれていません。

私も最初に読んだ時は、どう解釈すればいいのか悩みました。

これ、みんなアホばっかりやないかと。

 

でも出口さんは、だから面白いんですよ、と。

なるほどー。

読書に「ためになること」を求めなくてもいい。

楽しければいい。

そんな読書観を披露してくださいます。

 

一冊本を読んだくらいで人生が上向くなんて、そんなん人生なめすぎやろ、

というのが出口さんの弁です。

 

だけども出口さんは、京都大学を卒業して、日本生命に入社。

その後、「ライフネット生命」を創業し、現在は、大分のAPU(立命館アジア太平洋大学)の学長です。

でも出口さん、めっちゃ立派な人生歩んでるじゃないですか! と言いたくもなります。

物知りで、仕事もできて、人柄も良く、そして地位もある。

そんな人生はどうやったら手に入るんですか、と。

 

そんな出口さんが語る、人生論は、この本の4講に凝縮しています。

以前、出口さんが何かの講演で、「やりたいことが見つかりません」と打ち明けた高校生に、

「そんなんわからないのが当たり前です」とあっけらかんと答えてらして、

私は一瞬、ハラハラしました。

もうちょっと丁寧に答えてあげたほうがええんとちゃいますか、と。

 

「そんなん死ぬまでにわかればいいんです。

もし死ぬまでわからなかったら、自分は多数派やったな、と思えばいい」

えーー!

やりたいことを見つけてそれに打ち込んで、「これが天職」「これが天命」とキラキラ生きるのが

いい人生ではないんですか。

 

「歴史的に見ても、そんな人間はごく少数です」

出口さんの口から「歴史的に見ても」という言葉が出てくると、説得力があります。

本当に詳しいですからね。

 

ということは私たち「多数派」として生きる覚悟ができてないってことです冷や汗

「世界に一つの花」として、なんとかかっこよく生きようともがいていますが、

そんなカッコええもんちゃうでと。

 

歴史に名を残そうとまでは思わなくても、なんとか自分らしい人生をと願うのが凡人ですが、

世界には凡人があふれています。私も含め。

その凡人ワールドから飛び出すのは、どういう人か。

 

出口さんは、一番大きいのは「偶然」だと説きます。

もし同時代にボルトがいたら、どんなにかけっこが得意でも金メダルは難しい。

自分の努力だけではどうにもならないのが人生。

 

だったら努力しなくていいの?

そんなことはありません。

この話は、ぜひ本を読んでください。

 

歴史、読書、そして人生。

これまでの出口さんの著書の中でもっとも読みやすく、もっとも幅広く出口さんの魅力が伝わる本になっています!

どうぞよろしくお願いします。

 

最後になりましたが、準備からずっと丁寧にフォローしてくださった

NHK出版の高原敦さん、どうもありがとうございました!

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 09:17 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
誇りをもつってどういうこと?

本がすき。」というサイトで、ブックレビューを書かせてもらうことになりました。

光文社が運営するサイトで、声をかけてくれたのは『教養は児童書で学べ』の編集者樋口さん。

 

レビュアーには、森川亮さんや古市憲寿さんらの有名人、有名ライターさんらが名を連ね、

わたしなんてとてもとても、というところですが、書かせてもらえること自体がとても光栄なこと。

原稿を書くのも楽しかったです。

 

初回が先週公開になり、わたしが紹介したのは、

松浦弥太郎さんの『それからの僕にはマラソンがあった』です。

レビューは、こちら

 

タイトルが「元陸上日本一が驚いた、走る奥深さを描いた一冊。」です。

いきなりビビりました(タイトルは編集者がつけてくれます)。

 

もちろん自分で本文に書いているんです。

プロフィールにも書いている。

でもやっぱりビビる。

 

わたしなんて、すごくないよ。

特別じゃない。優秀でもない。どちらかというとドンくさい。

いつもそんなふうに思っていました。

 

中学時代、英語の授業で

be proud of 〜 という構文を習った時、

わたしは意味がわかりませんでした。

 

誇りをもつってどういうこと?

自慢していいの?

自分はすごいって思っていいの?

 

幼い頃から、何かが上手にできて得意げになると、いつもその先に母の非難めいた視線がありました。

また調子にのって!という感じ。

 

これまでライターとしてやってきて、時に、過分な提案をしてもらうことがあったんです。

「僕と一緒にこういうことをやってみませんか」とある社長さんに声をかけてもらったこともありました。

でも、わたしは自信がなくて、引き受けることができなかった。

 

わたしは出版社での経験もないし、実力だって大したことがない。

もしかするとしっかりしてそうとか、経験がありそうとか、思われているかもしれないけど、

それは誤解。

そんなふうに思っていました。

 

でも、いま思えば、一企業の社長さんです。

人を見る目だってあるだろうし、キャリア云々ではなく、

何かをわたしと一緒にやってみたいと思ってくださったんだと思います。

当時は、ひたすら自信がなくて、そこまで考えることができませんでした。

 

そうやって、お断りした話がいくつかあります。

迷う隙もなく、即答でした。

 

今回のサイトでは、ランナーだったことを全面的に出しています。

だけど、わたしがランナーとして、素晴らしかったか、というと、そこまででもないのです。

日本一は嘘ではないですが、オリンピックなんてかすりもしないし、日本記録だって出していません。

だけど、ここで遠慮してちゃいけないんだな、と思ったんです。

それだと、これまでと同じ。

 

今は掛け算の時代と言われています。

わたしよりすごいランナーはいっぱいいるけれど、

ランナーでライターという人は、あまりいない。

 

ライターXランナー として考えれば、少しは差別化できる、というわけです。

それが商売につながる。

こんなありがたいことはありません。

 

ちなみに母は、わたしのマスターズ競技人生を喜んでくれています。

「すごいね」と褒めてくれる。

 

でもわたしももう母からの評価をそこまで気にしなくなりました。

この先、母がまた「あまり目立ちすぎるな」と言ってきたところで、動揺しないと思います。

わたしはわたしの道を行く。

 

「ライターXランナー」という枠だけで勝負しようとは思っていませんが、

そういうやり方もある、と思えたことは大きな進歩です。

 

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 06:04 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
働く現場での男と女 サポート役を引き受けるのか否か

恋愛や家族関係のことだけではなく、仕事の場にもジェンダーは持ち込まれています。

わたしの場合、恋愛や家族関係ではのびのびと自分らしく振舞っていますが、

仕事となると、ちょっと違います。

 

やはりどうしても「サポート役」を担わざるを得ない。

そういう役割を期待されるんです。

わたし自身がもともとそこまで自己主張が強いタイプではありません。

お世話をしたい欲、みたいなのもあります。

 

編集者とライターという関係を、わたしはずっと上下で捉えていました。

編集者は仕事の発注者で、わたしは下請け。

そうした中で、男性編集者の中には、甘えたり、頼りにしたりすることで、

ライターにやる気を持たせるやり方をする人もいます。

一時期そういうパターンにどっぷりはまっていました。

 

その人のためにわたしがある、くらいの入れ込みようで仕事をしていたんです。

その人が思い描く企画を全て叶えてあげたいと思って、懸命に働きました。

ライターは、記事を書くだけではありません。

たとえば、ですが、ファッション誌で「小池百合子の1週間コーデ大公開!」という記事を

企画したとしたら、小池百合子さんに依頼をするのも、ライターの仕事になることがあります。

許可をもらうと、次は1週間の服の着回しを打ち合わせしなくてはなりません。

そういうちょっと厳しめの企画にも果敢に打ち込んでいました。

 

自分の手柄なんていらない。

編集者が喜んでくれれば十分。

手柄はすべてその人に持っていってもらっていいし、

もし不備があればわたしがすべて引き受ける、と思っていました。

懸命に働いて、でも、ヘトヘトでした。

 

その時はやる気満々だったし、やりがい、というか尽くしがいも感じていたのですが、

その日々の積み重ねでふと気づいたら、わたしはライターとしての自信を何ももっていませんでした。

編集者の無理な注文を聞くことに夢中になっていて、自分をないがしろにしていたんです。

 

こんな仕事の仕方、間違ってる、、、とすぐに思えればよかったのですが、

そのことに全然気づけませんでした。

というのは、ライターたるもの編集者を立ててなんぼ、と思っていたから。

 

だけど、少しずつキャリアを積むと、依頼される仕事の種類も変わってきます。

かつて頼りにされた「力仕事」系の仕事から、もっと「書く」ことに力点を置いた仕事が増えてきます。

成長しろ、と仕事の神様が言ってる。

でもわたしは、つらくて仕方がない。

 

それまでは編集者の顔色だけを見て仕事をしていたのに、もっと自分の力で仕事をしろ、と言われる。

でもわたしにはそこまでの実力がない。

だって、大した大学も出ていないし、文章を書く訓練も積んでいないし、

インタビューのノウハウだって知らない。

わたしには無理。

できない。

 

ずっと「尽くす」ことに力点を置いていたから、それ以外の仕事の仕方が身についていませんでした。

もうつらくてたまらない。

この時期は、ちょっと病んでいたと思います。

いわゆるスランプでしょうか。

当時のわたしは「編集者から頼りにされる」という状況に依存していたんです。

自分の意見をもつことを禁じていて、編集者の意図をいかに汲むかばかり考えていました。

自分だけの力で仕事が成立すると思えない。

 

そこからどうやって抜け出たのか。

とにかく、少しずつ、少しずつ、自分を励ましました。

大丈夫。できるから。

 

ターニングポイントになった出来事の一つは、

ある時、編集者から打ち合わせをしたい、と言われた時に、

「明日だと、●時以降渋谷でなら可能です」と返事をしたことです。

 

一般的には、打ち合わせというと、編集部までわたしが足を運びます。

でも、編集部が不便な場所にある場合、わたしは往復で2時間も取られたりします。

そのことにずっと疑問をもたないでいたのですが、

その時たまたま立て込んでいて、そういう返事をしてしまったんです。

 

メールを送った瞬間、しまった! と思いました。

偉そうなことを言ってしまった、と。

でも、相手は全く動じた様子はなくて、

「そしたら、15時に●●というカフェにしましょう」と返信が来て、

その時初めて、自分の都合を言ってもいいんだ! と気づきました。

 

そんなちっぽけなことから、少しずつ自分のやり方で進められるようになっていきました。

「尽くす」以外の貢献の仕方が見えてきた。

わたしの仕事は、編集者の無理難題を叶えることではなく、期日までに原稿を書き上げること。

 

だけど何年かは、自信がもてることもあれば、全然ない時もあって、

行きつ戻りつでした。

最近ですかね。

ようやくブレなくなりました。

今は、編集者とは、男女問わずかなり自由な関係を築いていると思います。

 

※この記事と昨日の記事は、前に書いた「尽くさない」という記事を削除して書き換えました。

あれは、意味がわからなかったと思います、、、「BUTTER」を読み始めて興奮状態で書いてしまいました。

失礼しました。

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 06:45 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
出口治明『教養は児童書で学べ』(光文社新書)

お手伝いした本が発売になりました。

ライフネット生命の創業者であり、読書家としても知られる出口治明さんが、

児童書を解説します。

 

取り上げるのは、この10冊。

モモ、はらぺこあおむし、アンデルセン童話、ナルニア国物語、アラビアン・ナイト、

ギルガメシュ王ものがたり、西遊記、せいめいのれきし、さかさ町、エルマーのぼうけん

 

児童書は、子どものために作られた本ですが、じつは、大人が読んでも十分おもしろい。

 

『西遊記』を読むと、中国人の本音と建前の世界が見えてきます。

一党支配で社会をびっちり統制しているのかと思いきや、

市井の中国人たちは思いの外、のびのびとしています。

それは、西遊記を描かれた頃からすでにそうなんです。

 

『アラビアン・ナイト』を読むと、アラブ人たちの前向きなエネルギーに圧倒されるでしょう。

彼らは徹底した実力主義だから陰湿ではないのです。

それを知ると、今のアラブの状況が特殊なのだとわかります。

 

『アンデルセン童話』を読むと、私たちの生きている世界には

どうしようもない理不尽が存在することに気づきます。

人魚姫もマッチ売りの少女も、報われない人生をまっとうしました。

そのはかなさは、大人にとってとても味わい深いものであるはず。

 

『はらぺこあおむし』をじっくり味わいながらページをめくると、

色彩とデザイン、そして構成がいかに考えて作られたものかがよくわかります。

いい絵本とは、そういうものなのです。

 

『さかさ町』では、あらゆるものがさかさになっています。町では子どもが働き、大人が遊ぶ。

病院では健康な人がお金を払い、病気になったら払わない。ものを作る人がお金を払い、買う人がお金をもらう。

さかさにすることで、物事の常識が違って見えてきます。

 

この本は、月に一回、出口さんのオフィスを訪れて、お話を聞き、

それをわたしが文章にまとめました。

ぜひ、手にとって読んでくださいね!

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 05:20 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
プロフィール写真 今昔物語

ここ半年で、TwitterとFacebookのプロフィール写真を変更しました。

Facebookというのがお節介で、数年以上変更していないと「そろそろ変えや」と言ってくるんです。

確かに、使っていた写真は5年くらい前(もっと前かも?)のもの。

本人との乖離も気になるところです。

でもこれ以上のクオリティのものを撮れるような気がしない。。。

 

 

 

 

 

これは、プロのカメラマン、プロのヘアメークさんの手によるものなんです。

本人より2割増し、いや5割増しかも。

 

カメラは、伊田淑乃さん

ヘアメークは、川北善徳さん(Van Council)

 

二人ともファッション誌の仕事仲間で、いつもは美しい女優さん、モデルさん相手に仕事をしておられるのに、

わたしなんぞをやってもらっていいのか、、、という話なのですが、

伊田さんの「お年玉企画 プロフィール写真撮影をプレゼント」というのに当選したわたし。

なんと無料で撮ってくれるというんです!

 

それならば、と自費で川北さんにヘアメークをお願いして、

美しく仕上げてもらい、撮影に臨んだのでした。

 

写真室で正規料金をお支払いしても、

あまりたくさんは撮ってくれないし、候補写真もたくさんくれません。

決めの一枚を撮る感じですよね。

 

でもこの時、伊田さんは大量に撮ってくれて、

コンタクトシートもこんなにもたくさんくれました。

 

 

それを、編集者やライター仲間に見せて、どれがいいかな?と相談して。

女優さんの写真を選ぶときもそうですが、ご本人がいいと思う写真と、

編集側が選ぶ写真とが違うこともも多いんです。

わたしもそうでした。

自分的には、ちょっとすましたような写真を選んでしまうんですよね。

でもみんな「今泉さんぽい」写真を選ぶ。

一番上の写真が、一番得票数が多かった写真で、

TwitterもFacebookもそれにしました。

 

この頃、わたしには目論見もありました。

媒体から「プロフィール写真」を求められるような仕事を増やしていければ、と

思っていたんです。

自分の名前で発言したり、原稿を書いたりする仕事ですね。

二人にもそんな話をしましたっけ。

 

でも、全然そっちは広がらなかったショック

伊田さんも川北さんも力を入れてくれたのになあ。。。

こんなに大量にいい写真があるのに、1カットをTwitterとFacebookで使用しただけ。

いやん、あんなに張り切ってくれたのにごめんね。

なんなら遺影にも使う、と言っていましたが、生き延びております。

 

このまま、この素晴らしいクオリティのプロフィール写真を闇に葬るのは申し訳ないので、

ここに残しておこうと思います。

伊田さん、川北さん、どうもありがとうございました。

 

そして今、TwitterとFacebookで使っているのは、走っている時の写真。

 

Twitter

 

もちろん男子たちには許可をもらっています。

 

Facebook

 

どちらもメークはほぼしていないに近く、さらっとファンデーションを塗っているだけ。

カメラはスマホ。

自然な感じの写真が最近の流れかもしれませんね。

 

 

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 04:45 | 仕事 | comments(4) | trackbacks(0) |
ブログを続ける理由

ブログのタイトル「Desert Island」(無人島)には、

ここは無人島なので、自由に読んで、自由に怒ったり、笑ったり、共感したり、反発したりしてくださいね、

という想いを込めました。

 

インターネットでサイトを閲覧する時、ほぼその人は一人です。

特にこんな個人ブログを読んでくださる方はほぼそうだと思います。自分だけの時間。

だからこそ、自由に何かを感じられる。

Twitterや2chなどに心ない言葉を書き込んでしまう人もいますが、

大半の人は、そんなことをしません。

心のなかでいろんなことを感じながら、あるいはただぼんやりと、眺める。

 

昨日、自分は相当変わり者だったのだ、と気づいたときにふと、

大学時代についての振り返り記事は、先輩方を傷つける内容だったのかもしれないな、と思いました。

ごめんなさい。

「楽しかった」と繰り返し書いたつもりではありましたが、それでもなお。

 

書くことで、誰かを傷つけることは多分にあります。

中学時代のS先輩。

私のことを懐かしんでメールをくださったのに、

私ったら、中学時代のつらかった部分まで書いてしまって、ごめんなさい。

楽しい思い出の中だけで生きていられれば良かったのに、私が弱くて。

 

敏子先輩や道子先輩、泰子ちゃんはもう常連な感じで、勝手にお名前を出させていただいています。

ありがとうございます。

もちろん無防備にではありません。

都度、判断はしています。

 

書くという行為は、何らかの傷を伴うもので、それが自分ならいいのですが、

誰かを傷つけることもあります。

「こんなことを書いていいのか」と眉をひそめる人もいると思いますし、

頭にくる人、イラっとくる人、反発を感じる人もいると思います。

私を嫌いになる人だっているでしょう。

 

どこで線引きをするのかは、難しい問題です。

なんでそんなことを書くんだ、と私自身があとで気恥ずかしくなることもよくあります。

 

それでも、書き続けようと思います。

書きながら、より良い方向性を探っていきたい。

 

怖くなることはしょっちゅう。

自分のバカさ加減に泣きたくなることもしょっちゅう。

 

書いたものは取り消せないのだとしたら、やめてしまうのも手。

記事を削除するのも手。

 

だけど、続けようかな。

アクセス数は、少ないんです。

この数でビビってちゃだめって話。

 

「毒娘」とか様々な検索ワードでたどり着く方がいます。

いろんなテーマで、いろんな方がたどり着いてくる。

だから無人島です。

 

以前、脚本家の中園ミホさんに「ブログはやんないんですか?」と聞いたら

「私、タダでは書かない」ときっぱりおっしゃって、さすがでした。

 

私はタダでどんどん書きます。

この道がたぶんどこかにつながるはずだと思っているから。

 

 

●「毒娘」記事がよく読まれているので、「母と娘」カテゴリーを追加してそのあたりの記事をまとめました。

 

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 06:07 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
仕事相手、全員のことが好き

ここ数年「もっと稼ぎたい」と言い続けているのですが、成果は今ひとつしょんぼり

どうしたものかな、、、と考えておりました。

 

もうちょっとアグレッシブになった方がいいのかしら、なんてことを思ったりするものの、

やっぱり元がそうアグレッシブではない。無理。

ノリが悪いんです。

真面目な仕事人、的な感じ?

 

いま出版不況と言われていますから、仕事先を少し広げる、

儲かっている業界に潜り込むことも必要なのかな、、、と思ったりもするわけです。

されど、大げさなアクションで場を盛り上げたりとかは、全くできないし、

相手をヨイショしていい気分にさせたりもできない。

そういう、お金の匂いのプンプンするような現場が苦手なんです。

ってことは、稼げないのかな、、、やっぱり。

なんてことをつらつらと考えていました。

 

フリーランスとしてもう20年近くライターをやっていて、

振り返れば、いろいろありました。

私は、ちょっと尽くしすぎるところもあって、

書く以外の雑用をいろいろ言い渡されたりもします。

どう考えても低く見られているな、、、と思うこともあった。

 

仕事の不平不満を愚痴ることも多かった。

理不尽な扱いに泣きたくなったり、

なかなか思う通りにいかないことも。

正直、裏切られたように感じることもありました。

 

でも最近、仕事の愚痴はほとんどありません。

どうやったら相手に自己を主張できるのかと、考えた日もあったんだけど、

最近は一方的に押し切られることはなくなった。

 

そして今、私は仕事をしている相手のこと全員が好きだな、と思って。

そういう状況に20年かけてもってきた。

いつも仕事相手に喜んでもらうために全力を尽くしてる。

意地を張ったり、駆け引きしたりすることは一切ない。

出し惜しみもしないし、値踏みもしない。

無我夢中。

一生懸命。

それって「好き」と思える人だけと仕事ができるようになったからできること。

 

先日、あるレストランで食事会を開催したのですが、

集まってくれた人たちが、見事に自分と同じようなのんびりした人たちでした。

その時ふと、私はそういう人たちと楽しくやっていれば、

仕事は続いていくかな、と思った。

 

今はこれでいいし、未来は今の延長線上にしかないし。

続けながら考えて、考えながら続けて、

少しずつ変化して、気がついたら、目に入る光景が違ってた。

そんな感じの未来。

大ブレークはないだろうけど、それでいい。

 

でもひとつ決めた。

「稼ぎたい」って口に出すのやめる。

「稼ぎたい」って「稼げてません」と同義語。

そんなこと、わざわざ宣言する必要はない。

 

posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 04:57 | 仕事 | comments(0) | trackbacks(0) |
努力の行方

ランナー生活から足を洗って最初に戸惑ったのが、自分はこれから何を基準に

行動すればいいかということでした。

 

それまではずっと「競技にプラスかマイナスか」だけで全てを判断していたんですね。

映画一本見るにしても、それって、プラスになるのかな? と。

『炎のランナー』ならOKみたいな。

激しい向かい風の中、自転車をこいでいるときは、

「これは間違いなくプラスになる経験だ。負けないようにしよう」と気を張るとか。

なんじゃそりゃ、というところまで、そんなふうに考えていました。

 

大学時代はかなりそれは緩くなっていて、

空き時間もたっぷりあるし、どうすればいいのやら、と戸惑ったのですが、

社会に出るともう完全に、指針を失う感じでした。

 

努力したり頑張ったりするのは得意なんだけど、

その得意を、どう発揮すればいいのか。

仕事って、スポーツに比べれば断然多面的で、何かをやるにしても根回しが必要だし、

男性上司に気に入られることも必要だし、先輩女性からいじめられないようにすることも大切。

Aの仕事とBの仕事の優先順位はどう決めればいいのか。
政治的な判断も必要だし、損して得取れとか、寄らば大樹の陰とか、
長い物には巻かれろとか、いろんな状況があるわけじゃないですか。

競技をやっている限り、他人のことを気にせず生きていられた私ですが、

その時、かなり「はっ!」としたことを覚えています。

世界は私が思うよりはるかに複雑だ・・・。

 

やばい。

仕事ができないタイプではなかったので、

企業という場でキャリアを積んで、出世を狙う道もあるにはあったのですが、

私は、会社員というかなり総合的な判断を求められる場で、

階段を登っていけそうにないと思いました。

もうちょっと何かに特化したほうがいい。

 

私は、大学生の頃から「養ってもらう」という生き方はしたくないなあと漠然と思っていました。

これはまあ波があって、定期的に「高校野球の監督の妻」的なことをやってみたい衝動とか、

夫のためだけに生きる専業主婦、みたいなものにほんわかと憧れる時期もなくはなかった。

「男性に尽くしたい」衝動もちょっとはある(ほんまやで)。

 

だけどトータルで言えば、自分のだんなさんに、妻子を養うために、

イヤなことを我慢して会社に尽くす、みたいなことをさせるのはイヤだなあと。

そこだけ書くと、なかなか思いやりがあるんですが、

妻子のためだから頑張れる、なんて言われるのは「迷惑」くらいな感覚。

自分のために頑張れる人であってほしい。

 

さてどうしよう。

ここから先は、かなりざっくりと省くのですが、

ライターという職業に出会えたのは、ものすごく幸運だったと思います。

 

何しろ、結婚以来ずっと専業主婦で、キャリアの道が途絶えていた。

夫の海外勤務がきっかけで専業主婦ライフが始まったとは言え、

自分のポリシーとはちょっとちがう。

しかしとりあえずは、子どもを育てなくてはならず。

 

そういう中で、なんとかライターとなることができて、

この職業は、かなり私の得意が生かせる仕事だと思います。

頑張り方の部分において。

 

ただそこをもっと、さらに頑張る必要がある。

努力って、才能に支えられる部分があります。

私が、あれほど努力できてのは、努力に答えてくれる才能があったから、

と言えなくもない。

 

能力のない部分を努力でカバーする、とよく言いますが、

それはちょっと違う。

能力のなさは、努力では補えない。

私が得意なのは、先鋭化させる努力で、何かを極めていく努力。

走ることに比べれば、かなり能力的には落ちるライター業で、

どう努力を発揮していくかは、もう少し鍛錬が必要な感じ。

努力って意外と難しい。

 

というわけで、年末年始、かなりガッツリ原稿を書かねばなりません。

年賀状はお休みします・・・。

壮大な前振りだったショック

 

 

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