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ライター今泉愛子のブログです
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そんなに儲けたいの?
ショック・ドクトリン
ナオミ・クライン著
岩波書店
上巻・下巻 各2,625円

 日本で出版されたのは昨年ですが、
米国では2007年に出版された本で、とても話題になったとか。
たしかに衝撃的な内容です。

でもタイトルがわかりづらいですね。
ショック・ドクトリンとは、
「惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される
過激な市場原理主義改革のこと」だそうです。

「大惨事につけこむ」ってどういうことでしょう。
たとえば、911ですね。
あれによって、米国民はテロを脅威と強く意識するようになりました。
そこで、テロ対策に莫大なお金をかけることになります。
当然、それに対応する企業は大儲けします。

それは「必要なことだから仕方ない」と思うかもしれません。
でも、企業があらかじめその機会を探っていたとしたら?
自分たちの都合のいい演出が加えられていたとしたら?

この本のベースになっているのは、
ミルトン・フリードマンが提唱する、新自由主義への疑念です。
新自由主義とは、市場原理主義とも言いますが、
小さな政府・・・要するに、どんどん政府の力を小さくして、
民間にゆだねましょう。
自由な価格競争をするのが、経済にとっては一番いいのです、
という考え方ですね。

これ、日本でもしきりにいわれました。
国鉄も電電公社も民営化しました。
そのあたりまではそう悪くはなかったのかも。

でもこの本に出てくる、世界の「ショック・ドクトリン」の例を
読んでいると、相当びびりますよ。

たとえば、スマトラ沖地震。
大惨事後の復興が民間主導で進んだ場合どうなるか。
スリランカの海岸線に登場したのは、観光客が楽しめる高級リゾートでした。
地元の漁民は、家も仕事場も同時に失ったわけです。

その地域から上がる「売り上げ」は、そのほうが多いかもしれません。
小さな漁船で、魚を釣って生活したところで、
そう大したお金にはなりません。
海外の金持ち客をよんだ方が、売り上げは立ちます。
でも、それが本当に正解なの?ってことです。

金儲けが悪いとはいいません。
でも、金儲けに走りだすと、本質はどんどんゆがめられる。

海岸沿いに漁民が住んで、漁業をやるより、
観光客をよんだ方が外貨も獲得できるし、海岸線はきれいだし、
いいことづくめでしょう? と言われても、すんなり「うん」と言えません。
地元のひとたちの幸せを犠牲にして成り立つ、新自由主義って、
どうなの?

もちろんケースバイケースではあるんです。
古い体制を打破しなくてはならない場面もあるとは思います。
でも経済効率を最優先しなくてもいいと思う。
だってそもそも、なんでそんなに儲けなくちゃいけないの?

自由な競争によって、大手のスーパーが地方にたくさん進出して、
誰が儲けたの? 
大手企業じゃん!
みたいな話です。
もちろん地元の人にとっては、豊富な品揃えも魅力でしょうし、
いいものが安く手に入ったりする場面も増えたのかもしれません。
でも「儲け」最優先の企業は、儲からなくなったらとっとと撤退します。
それでいいの?

わたしが興味深かったのは、終章に描かれた、各国の動きです。
こうした米国式新自由主義に反発する国もたくさん出てきてるんです。

たとえば、ブラジルは、IMFとの融資協定を更新しないことに決めたとか。
自国にとってプラスになるとは思えないからです。

ボリビアは、世界銀行の仲裁裁判所からの脱退を発表。
モラレス大統領はこう言います。
「世界中のどの国の政府も裁判に勝った試しはない。
勝つのはいつも多国籍企業の方だ」

小さな政府を標榜した新自由主義は、自由な競争を促進して、
大きな企業を育てたということでしょうか。
と考えると、TPPも要注意な気がしてきます。

世界中から垣根をなくして、一番得するのは、いったい誰なんでしょう。
そもそも「得する」という考え方がおかしい気がしますよね。
そんなに儲けてどうするんだ!

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posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 17:54 | 書評 | comments(0) | trackbacks(0) |
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