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ライター今泉愛子のブログです
私がアイドルだった頃
 私がアイドルだった頃
長谷川晶一
草思社
1890円

おニャン子やミニスカポリス、少女隊、セイントフォー、
ギリギリガールズなどに在籍したり、あるいは個人で活躍していた
13人が登場します。

申し訳ないことに、ここに登場する方たちのなかで
私が知っていたのは数人。
彼女たちの詳しいプロフィールについては
まったく知りませんでした。

でも面白かった。
「アイドル」に憧れる気持ちは、多くの女の子が抱くもの。
わたしも小学生のころは、キャンディーズに憧れました。

アイドルというのは、ある種の制作物なんですよね。
操り人形的な部分もすごくある。
そしてある意味使い捨てにされる職業なのかもしれません。

おニャン子の新田恵理さんが言っていました。
これまではテレビの特番などで「元おニャン子クラブ」という立場で
話を聞かれることがあった。
でも今はその役割を「元モーニング娘。」のメンバーがまかされていると。
そう「元○○」という立場にまで消費期限があるんですね。

まずアイドルを続けているうちにかなりメンタルがやられます。
アイドルは存在自体が「演じる」ものなんですよね。
で、それはいつか期限が切れる。
自分はどうすればいいのか・・・。

「脱ぐ」のも選択肢のひとつです。
登場する何人かは脱いでいます。
脱ぐ・脱がないは職業上の選択肢のひとつだと思いますが、
それをどうつなげていくかは、かなり重要です。
いちど脱いでしまうと「脱ぎありき」になってしまうみたい。
そんなはずじゃない。
ただ話題がほしかっただけ。
そんなこともあります・・・。

じつは以前にもちらっと書きましたが、
わたしも中学生、高校生のころ、ちょっとだけ有名人でした。
(陸上競技のほうで)
田舎だったので、ほかに話題もなかったというか。

ですが、人の話題に上るって、けっこうつらいんです。
絶えず見られている。
すぐに噂になる。
謂れのない中傷を受ける。

私の場合、陸上競技で実績が伴っている間はよかったんですが、
実績が伴わないことを悪口まぎれに言われるのがつらかったかな。
十分気にしていますから、みたいな。

でもこれを読むと、その程度でつらいと言ってどうするよ、と
反省しました。
アイドルだった彼女たちはほぼ全員、そんな体験はしています。
でも「やりたいのなら、やればいいじゃない」と思ったという
嶋村かおりさんはじめ、皆さんそういうことにはまったくくじけなかったみたい。
後藤理沙さんは、2chに自分の悪口を書かれているのを見ても、
「結局、みんな私のことを見てるんじゃん」と思うのだとか。
個人的には、そこに感動してしまって・・・。
あの頃のわたしに伝えたいわ。
もう少し視野が広ければよかった。

そんなたくましい彼女たちでも、アイドルという立場では、
「自分は意見を言ってはいけない」
「言われた通りにしなくてはならない」と思い込んでいたみたい。
それで売れればいいのですが、売れないとそこからだんだん壊れ始める。
「私って、本当は何がやりたかったの?」ってことになるんですね。
元アイドルたちが現在、模索している状況も書かれていて興味深かったです。

「お、やるな」と思ったのは矢部美穂さん。
セルフプロデュースという言葉を何度も口にしています。
彼女は、お人形のようなアイドルからうまく脱皮しています。
生い立ちは、すごく大変だったように見受ける矢部さんですが、
「不幸な時期? ないですね。”大変だ”と思うことはあっても、
”不幸だ”とは思わないですね」と。
「本当に不幸な人だと、誰も寄ってこないんですよ」

わかっている人だなあ、と感心してしまいました。
父親がいなくても、いじめを受けても、自分が不幸だとは思わない。
人と比べるから不幸だと思うんですよね。

登場している13人とともに、みんな、がんばろうね!と
思える一冊でした。
たくましく生きていこう。


posted by 今泉愛子(詳細はクリック) | 10:20 | 書評 | comments(0) | trackbacks(0) |